雨が降っている。
私は窓際の席で、雨を眺めている。
今日も、この喫茶店にいる。
おばけの私
私は、おばけだ。
いつからここにいるのか、覚えていない。でも、ずっと昔からいるような気がする。
目の前には、コーヒーカップがある。誰が淹れたのかは分からない。でも朝になると、いつもここにある。
私は、カップを手に取る。
ゆっくりと。温かい。
コーヒーを飲むことはできないけれど、この温もりは感じられる。それだけで、いい。
窓の外を見る。雨が、降り続けている。
小さな住人たち
テーブルの下に、ねずみたちがいる。
「おばけさん、今日も雨だね」
小さな声が聞こえる。私は、そちらを向く。
「そうだね。でも、雨の日は好きだよ」
私は答える。
ねずみたちは、私のことを怖がらない。最初からそうだった。
「雨の音、いいよね」 「ここにいると、落ち着く」
ねずみたちは、そう言って丸くなる。テーブルの脚の影で、小さな体を寄せ合っている。
隅っこには、あの生き物がいる。
何者なのか、誰も知らない。私も知らない。ねずみたちも知らない。
でも、ずっと昔からそこにいる。
時々、小さく光る。
私は、カップを置いて、あの光を眺める。
不思議な光だ。でも、心地よい。
誰もいない喫茶店
この喫茶店には、誰もいない。
店主もいない。客もいない。
私たちだけがいる。
おばけの私と、小さなねずみたちと、謎の生き物。
でも、それでいい。
私はおばけのままでいられる。 ねずみたちは小さいままでいられる。 あの生き物は、謎のままでいられる。
誰も、何者かになる必要がない。
ただ、雨音を聴いていればいい。
雨の音
外では、まだ雨が降っている。
私は窓の外を眺める。雨粒が窓ガラスを滑り落ちていく。
手を伸ばして、窓ガラスに触れる。
冷たい。
でも、心地よい冷たさだ。
コーヒーの香りが、喫茶店を満たしている。
ねずみたちの小さな寝息が聞こえる。
謎の生き物が、ゆっくりと光っている。
私は、もう一度カップを手に取る。
まだ、少し温かい。
雨の日は、こうして過ごす。
ただ、ここにいる。
それだけで、十分。